「実践的な新人看護職員研修が患者さんの安全、安楽につながる」
関西医科大学附属枚方病院(大阪府枚方市)
平成18年1月に開院した関西医科大学附属枚方病院は、
特定機能病院であり、災害拠点病院、総合周産期母子医療センター、がん診療連携拠点病院、高度救命救急センターとしても認可され、病床数750床の北河内地区における中核病院です。
看護職員数は約850名で毎年100名前後の新人看護職員が入職します。
入職してから約3週間を、教育担当の看護副部長櫻井知賀氏が中心となって、毎年趣向を凝らした内容で集合教育を行っています。
特にユニークなのは、看護師が管理を行う様々な物品の適正使用に関して、実際の物品を手に取りながら体感してもらう研修です。研修時から適正な使用を体感することで、その後の患者サービスの向上にも繋がると言います。
そんな櫻井氏にお話を伺いました。
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貴院の新人研修に関してお聞かせください。
櫻井氏 2014年度は既卒者7名を含む、93名の看護職員が入職しました。
特に新人看護職員は、看護職員としても社会人としても初めてのことばかりで、学生時代とは違う数多くの経験に戸惑うことが多いものです。
新人看護職員に対しては、学生時代に学んできた基礎を土台にして、
1年間を通して看護実践能力を高められるような教育体制をとっています。
超急性期病院として、クリティカルケアの基礎を習得すると共に、医療チームの中で多重課題を抱えながら患者さんのケアが安全に行えるよう、日常生活援助の基本を身に付けるための研修プログラムと支援体制を準備しています。
平成22年4月から、新人看護職員の卒後臨床研修が努力義務化となりました。必要な知識、技術、態度を統合した臨床実践能力を、「知識としてわかる」「演習でできる」「指導のもとでできる」「できる」の4段階で、1年目の5月、7月、10月、2月に評価します。
自己と他者の両側面から評価を行い、最終的に到達できるように項目に応じて集合教育と部署での教育(OJT)を組み合わせて研修を行っています。
「演習でできる」の中で可能なものは、シミュレータや実際に使用している物品を使いながら行っています。
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具体的にはどのようなものでしょうか?
 
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櫻井氏 本年度は部署に配属前の集合研修4月4日~17日まで実施しましたが、「部署別技術研修」は、14日、15日の2日間開催しました。この「部署別技術研修」というのは、看護師にとって身近で、実施する事の多い「導尿カテーテル」「吸引」「輸液管理」「血糖測定」「口腔ケア」等に関して実際の物品を手に取りながら、適正に使用してもらえるよう体感してもらう研修です。
例えば「導尿カテーテル」のコーナーでは、シミュレータを使用して無菌操作で導尿カテーテルを留置する手技の学習と、導尿カテーテル管理上でのトラブルを回避する学習を実施しています。アンケート結果にも、「導尿は知識不足だったので、扱い方だけでなく、管理方法についても学べて非常に役立った。」「患者さんに実施する時は責任を持って基本を大切に行いたいと思う」などの声があがっています。
新人看護職員は実際に患者さんに技術を提供するにあたって、安全で安楽にできるかということを非常に気にしています。ですので、その前に物品を実際に作っているメーカーの方々の協力も得ながら、正しい使用方法を学び練習することは、とても大切だと考えています。
結果的には患者さんにも安心して頂けることにつながりますので、今後もぜひ続けていきたいと思っています。 |
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「地域医療連携の活性化 ~地域全体の感染対策への取り組み~」
「安全で質の高い医療の実現へ
~泌尿器科医と感染管理認定看護師の連携~」
東邦大学医療センター大森病院(東京都大田区)
1925年(大正14年)12月帝国女子医学専門学校の付属病院として開院した歴史をもつ、東邦大学医療センター大森病院は、特定機能病院であり、救命救急センター(3次救急)、東京都指定2次救急医療機関、総合周産期母子医療センター、地域がん診療連携拠点病院、東京都感染症(診療・入院)協力医療機関としても認可され、病床数972床の東京城南地区における中核病院です。
また、教育施設としての役割も担い続けており、医学部学生等の実習も行われています。
病院理念は、「良き医療人を育成し、高度先進医療の研究・開発を推進することにより、患者に優しく安全で質の高い地域医療を提供する」ことを掲げており、高度な医療、先進的な医療の推進に加え、地域完結型医療を目指しています。
安全で質の高い医療の実現のために、東邦大学医療センター大森病院では、荒木弥生氏(感染管理認定看護師)が中心となって、毎年定期的に研修が実施されています。
中でも、「尿路関連カテーテル管理」に関しては、青木九里先生(泌尿器科)と協働で実施されています。
今回は、荒木氏、青木先生にお話を伺いました。 |
貴院の研修に関して、お聞かせください。
荒木氏: 当院では、年間スケジュールを立てて毎月研修を実施しています。
(参考:平成26年度 4月新入職者研修、 5月麻疹、 6月MRSA、 7月医療訴訟事例、 8月風疹・麻疹・水痘、 9月耐性菌、 10月結核、 11月疥癬、 12月ノロウィルス、 1月インフルエンザ、 2月洗浄・消毒・滅菌、 3月抗菌薬)
内容も医師向け、看護師向け、医療スタッフ向けで講師を変えて、満足度を高めるよう意識しています。
「尿路関連」の研修も、例年実施しています。看護師にとって、普段から馴染みの製品ではありますが、“知ってそうで知らない”知識も多く、毎回好評です。 |
“知ってそうで知らない”知識とは具体的にはどのような内容ですか?
荒木氏: 例えば、採尿バッグにはバッグ内圧を調整するための通気孔(エアフィルター)がありますが、現場では意外と認識されていません。尿の流れを良くするために取り付けられていますが、反面、濡らしてしまうと折角の役割が機能しません。知識として持っていれば、シャワー浴の時に通気孔をビニール袋などで保護し、濡れないように保護する事ができます。
また、当院では決して多くはありませんが、長期留置の患者さんに見られる「紫色蓄尿バッグ症候群」(PUBS)も、発生メカニズムや対策を知識として持っていれば、慌てずに対応出来ます。
トラブルを時に経験する事もありますが、尿路の解剖や蓄尿・排尿生理、トラブルの要因や対処法を看護師も知識として持つ事が、対策として重要だと考えています。
当院では、泌尿器科・青木先生に解剖からトラブル対処法まで講義をしてもらっています。 |
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青木先生から見られて、看護師向けの「尿路関連」研修はいかがですか?
青木先生: 当院に来るまでは、同様の研修はしていませんでした。現在、院内感染対策委員の一員として活動しており、荒木さんに誘われたのが始めたきっかけです。
私も、尿道留置バルーンカテーテルの取り扱いに関して、尿路の解剖やカテーテルの構造を理解しておく事は重要だと考えています。
特に、当院は大学病院ですので、他施設に行かれる看護師も多くいますし、毎年多くの新人看護師が入職します。汎用品である尿道留置カテーテル関連の知識をもっと多くの看護師に知ってもらいたいと思います。
例えば、解剖を理解していれば、尿道内でカテーテルを膨らませるトラブルを回避する事にも繋がりますし、カテーテルの構造を理解していれば、クランプする際の適切な位置もわかります。
カテーテル留置に際しても、キット内の滅菌手袋を装着した手で挿入すれば、キット製品採用以前のセッシを使用した留置と比較して、カテーテルを傷つける事なく留置出来ます。
加えて、トラブルが発生した際は、無理しない範囲で泌尿器科医にコンサルタント依頼をしてもらう事も重要で、安全で質の高い医療の実現の為にもこうした研修の意義は大きいと思います。 |
研修において参加者の熱心な姿勢が印象的でした。何か工夫されている点があれば、教えてください。
荒木氏: やはり、専門家である泌尿器科・青木先生に講義をお願いしている点です。
内容も、「講義」と「トラブルシューティング」の2部構成にしているので集中力も持続しやすい。
また、1日だとこれない人もいるので2日としています。そして、昼間の都合のいい人、夕方の都合がいい人がいるので、時間帯をかえて開催し、少しでも参加しやすいようにしています。
参加者は、自部署のスタッフに研修内容を伝える役割も担っていますので、真剣に研修に参加してもらっています。 |